朝、出退社時の通勤路で、ほぼ毎日遭遇するジョガーがいる。
野生的な風貌を持ち、走り方もやはり野生的で、猿人やら原人チックな方だ。
もう数年来でその方を見掛けているのだが、去年の夏前からだっただろうか?、ある変化が生まれた。
胸の部分に「おはよう」と書かれた紙をつけて走りだしたのだ。
「め、メッセージを発している!?」
彼はジョギング中にすれ違う我々に向けてメッセージを発信し始めた。
その胸の「おはよう」の文字は、しばらくして「元気」に変わり、以降、友愛、信頼、感謝… と、定期的に変っていった。
それらの言葉は、共感を生むものであったり、時に自分に欠けているもので、少し気恥ずかしくなったりもした。
何となく、神様から自分への啓示とも受け取れそうなものだった。
そんな、彼の発するメッセージを「次は何だろう?」なんて、次第に楽しみに待つ様になった。
昨年末の言葉は「情熱」で、
年明けの言葉は「初心」だった。
先の日曜日は木津川マラソンのフルに出場して来た。
アットホームで暖かみがある、大変素晴らしい大会で、天気も絶好のマラソン日和、ウサギの着ぐるみで走ったので、応援もすごくて、ホント、これだけ周りの注目を浴びるなんて、生涯初と言って良い程だった。
ランナーさんやスタッフの方々との交流も出来、何ひとつ文句のつけ様の無い、最高の大会のはずだったが…
肝心のマラソンの内容が、自己ワーストで惨たんたるもの。
楽しく走れなかったし、途中で止めたいとも思った。
そうなった原因は、マラソンをナメてしまっていたからだと思う。
準備不足で、完全に「情熱」やら「初心」を忘れてしまっていたのだ。
月曜の夜勤を終えての帰宅の道、彼が走っていた。
胸の文字に目をやると、新しい言葉で「気合」と書いてあった。
通り過ぎ際、彼は「どうだ、わかるかい?」とでも言うか様に、目に笑みをたたえながらオレの顔に視線を投げて行った。
朝走る神様からの叱咤激励を苦笑いで頂いた。
「とりあえず… 気合い、入れて行きます。。」
よし、取り返しに行くぞ。